
カラフルデザイン広報企画部です。
不動産投資において、収益物件を所有するオーナー様にとって避けられないのが「修繕」に関する問題です。物件の維持管理はオーナー様にとって資産価値を守るための重要な役割ですが、修繕範囲や費用負担を巡って入居者様とのトラブルが発生するケースも少なくありません。これを防ぐためには、修繕義務に関する正確な知識と適切な対策が必要です。
この記事では、賃貸住宅における修繕トラブルの原因や解決策、具体的な修繕内容と費用相場、さらにトラブルを未然に防ぐためのポイントについて詳しく解説します。
1.賃貸住宅における主な修繕トラブルの原因
賃貸住宅で起こりがちな修繕トラブルには以下のようなケースがあります。
・原状回復費用の負担割合に関する争い
入居者様が「費用が高すぎる」「納得できない」と主張。
・見積書の不透明性
修繕費用の内訳が明確でないため、入居者様が支払いを拒否。
・敷金返還を巡る問題
原状回復費用を差し引いた敷金が返還されないといったクレーム。
・管理会社の対応不足
管理会社が迅速に対応せずトラブルが悪化。
これらの問題は、修繕範囲や費用負担についての認識の違いや説明不足が原因となることが多いです。
2.修繕の種類と具体例、費用相場
修繕にはいくつかの種類があり、それぞれオーナー様が負担する範囲が異なります。
以下に代表的な修繕内容と費用相場をまとめました。
(1) 原状回復
入居者様退去後に行う修繕です。通常の生活で生じた経年劣化や自然損耗はオーナー様の負担、故意・過失による損傷は入居者様の負担となります。
主な工事内容
・ハウスクリーニング:1.5万〜7万円
・クロス張り替え:1部屋あたり3万〜8万円
・フローリング張り替え:1畳あたり2万〜6万円
(2) リフォーム・設備対応
設備の交換や老朽化した部分の修繕が含まれます。リフォーム・設備対応にかかる費用は基本的に全額オーナー様の負担となり、入居者様に請求がいくことはありません。
主な工事内容
・エアコン交換:5万〜7万円
・キッチン設備交換:20万円程度
・給湯器交換:10~20万程度
・浴室リフォーム:15万〜20万円
※工事内容によっては(浴室を丸ごとリフォームするなど)100万円単位の費用が発生する場合もあります。
(3) リノベーション
物件価値を高めるための工事。間取り変更やグレードアップが主な内容です。リノベーションにかかる費用もオーナー様の負担が原則で、入居者様の負担はありません。
主な工事内容
・和室から洋室への変更:50万円程度
・キッチンやユニットバスのリフォーム:100万〜200万円程度
・畳からフローリングに張り替え:1㎡あたり2万~6万円程度
(4) 大規模修繕
大規模修繕は、建物全体の安全性を確保し、資産価値を維持するとともに、住環境の向上や空室対策を目的に実施される重要な工事です。入居者様に快適で安心な暮らしを提供するためにも、10〜15年に一度は以下のような修繕を計画的に行う必要があります。これらの修繕にかかる費用は、原則としてオーナー様が負担することとなります。
主な工事内容
・外壁塗装(2階建ての場合):180万〜300万円程度
・外壁塗装(3階建ての場合):250万〜500万円程度
・屋根の塗装工事:30万〜120万円程度
・廊下や階段部分の補修:5万〜30万円程度
・雨樋の交換:15万〜60万円程度
3.修繕トラブルを回避するための具体策
(1) 賃貸借契約時の丁寧な説明
修繕範囲や負担割合について、契約時に明確に説明しておくことが重要です。
★説明すべきポイント
・修繕義務免除特約がある場合、その内容を細かく説明。
・共有設備の修理責任や費用負担の範囲を明示。
(2) 修繕費用の透明化
修繕費用の見積書や領収書を明確に提示することで、入居者様の不安を和らげられます。
(3) 定期的なメンテナンス
共用部分や設備の定期点検を行うことで、修繕箇所を未然に防ぐことが可能です。
(4) トラブル発生時の迅速な対応
修繕トラブルが起きた場合、管理会社や専門家の助けを借りて速やかに対応しましょう。
4.入居者様が修繕する場合の注意点
民法607条の2によれば、オーナー様が修繕義務を果たさない場合、入居者様が自身で修繕を行うことが認められています。しかし、入居者様が修繕を実施する際には、いくつかの重要な注意点があります。これらを無視すると、費用の精算がスムーズに行えない、あるいはさらなるトラブルに発展する可能性があります。
(1)修繕前の通知義務
入居者様が修繕を行う前に、オーナー様へ修繕が必要である旨を通知しなければなりません。この通知は口頭ではなく、書面やメールなど記録が残る形で行うことが推奨されます。通知の際には、以下の内容を明記しておくとトラブルを避けやすくなります。
・修繕が必要な箇所(具体的な部位や設備)
・不具合の詳細(写真や動画を添付すると説得力が増します)
・修繕を行わなければ生活に支障をきたす点
(2)修繕範囲の制限
修繕を行う場合、その範囲はあくまでも「物件を元の状態に戻すための最低限必要な修繕」に限定されます。たとえば、故障したエアコンを修理するのではなく、新機種に交換するような場合、オーナー様にその費用を全額請求することは難しい場合があります。
(3)費用請求の手続き
修繕費用を立て替えた場合、領収書や請求書を保管し、オーナー様に精算を求める必要があります。
5.よくあるトラブル事例と解決策
(1) 原状回復費用を巡るトラブル
事例: 入居者様が「原状回復費が高すぎる」と不満を持ち、支払いを拒否。
解決策: 国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を基に費用配分を見直し、透明性を確保した見積書を提示。
(2) 設備故障による緊急対応
事例: 真夏にエアコンが故障し、入居者様からクレームが発生。
解決策: 提携業者と連携して即日対応を実施。省エネ効果のある最新型エアコンを設置し、入居者様の満足度向上に成功。
(3) リフォームを巡る判断
事例: 長期入居者退去後の大規模リフォームを検討するも、高額な費用にオーナー様が悩む。
解決策: 購入希望者の意見を取り入れたリフォーム内容を調整し、最小限の投資で物件売却をスムーズに実現。
6.修繕義務の基準と例外
オーナー様の修繕義務は、民法606条に基づき、物件が入居者様の「使用収益」に適した状態を保つために必要な修繕が発生した場合に適用されます。具体例として以下が挙げられます。
・雨漏り:居室が水浸しとなり生活が困難な場合、速やかな修繕が必要です。
・排水設備の故障:トイレや浴室の排水が機能しない場合も同様に修繕が義務づけられます。
賃貸住宅における修繕トラブルは、事前の準備やオーナー様の知識次第で大幅に回避できます。修繕義務の範囲を正確に理解し、入居者様との信頼関係を築くことで、トラブルのない安心な賃貸経営を実現しましょう。